中島みゆきコンサート IN 浜松

平成13年12月11日午後六時半 浜松アクトシティー大ホールにてコンサートは始まった。
一階から四階まである客席はすでに満員となった。ステージは森の中の木々の間の小さな広場というような
イメージでオブジェが並んでいる。青白い照明がステージを浮かび上がらせている。
客席の照明が、緩やかにおとされて行った。静かなBGMが流れる中。ステージ中央奥の幕から、
中島みゆきがセンターマイクに静かに歩み寄った。白いドレスを着ている。妖精のような彼女。
客席は魅入っている。
オープニングは「明日」という曲であった。九月から始まった全国縦断ツアーコンサートも終盤に入っている。
出だしで声を少し、つまらせていたのは、疲れのせいなのだろうか。
クリスマスには札幌にて最終公演が行われる。今日の札幌は一晩に57センチの雪が降った。
新記録だという報道がなされている。札幌は彼女の故郷である。
歌い終わった彼女は、いつものかん高いコケティッシュなトークを始めた。
オールナイトニッポンでDJをやっていた頃の彼女を知るファンには、感じなかったかもしれないけど、
最近のNHKの人気番組で初めて彼女の歌声を知った人達には、意外ともおもえたのでは
ないでしょうか。
中島みゆきは言った。
「喋らなければ美人と言われるのです。」・・・・・とね。
でも、ファンは知っている。このハイテンションのトークは彼女の作りであることを。
芸といえば、そうなのかもしれない。話術は実に巧みである。
三年ぶりのコンサートツアーになるということなのだが、本人は毎年、「夜会」をやっているし、
そのための曲を作りアルバムも出しているので、ファンの皆様にお会いしていないなどという
感覚はもっていなかったと。・・・・・・・・・・・・・・・・・
ただ、「夜会」は渋谷での公演であって、全国の皆様がこれないような状況だったこと。
九月に始まった頃には少し暑く感じた衣装も今となると、薄着のような感じがするとか。
浜松の会場は綺麗ですねとか。曲と曲の合間のトークが会場を魅了し続けた。
「今日は、昔の曲も歌います。」といって、私の好きな「狼になりたい」を歌ってくれたりもした。
そんな中で「私の子供になりなさい」という曲が歌われた。
彼女のレビューからのファンである私でも、知らない曲があるものなのですね。
これは1998年に発表されたアルバムで何故かしら持っていなかったのです。
この日のコンサートで唯一知らなかった曲でした。
男の視点から詩を作ることの多かった彼女ですが、女性の目で作った詩なのだそうです。
妻から見た男としての夫。母性愛といえば、それでお終いなのでしょうが。男の私からいうと、
少し抵抗があります。
でも中島みゆきの母性を感じる曲です。彼女の若い頃の詩には男に対する恨み節的なものが多かった
けれども、この頃は、やさしさを感じる曲も多くないました。
ステージも中盤に差し掛かったとき、彼女は椅子に腰をかけて開演前に観客から集めた
メッセージを読み始めた。そういえば入場する前にリーフをかたどった紙にメッセージをと
スタッフから伝えられたのだが。
これが、スタッフの手で選別されて、彼女の手に渡されたのです。
何人かの方々のメッセージが読み上げられて、その方々のお名前が告げられた。
会場にいる方から“はい”という返事がくる。会場は湧き立った。
旦那に子守りをさせて駆けつけた主婦。休暇をとった教師。会場に一番乗りした女性。
それぞれのエピソードが語られた。休憩時間のない公演です。
ここが観客にとっても彼女にとっても小休止の時間でした。
後半には彼女は赤いドレスに着替えている。中島みゆきは赤が似合う。
妖精ではなく、妖艶な姿に変わった。・・・・・・・美しかった。ただ、ただもう・・・・・
美しい人です。(彼女いわく、しゃべらなければ、でしょうが・・・・・違いますよ)
様々な照明の中で彼女は躍動し続けました。息を呑むとはこのことでしょう。
いよいよ、アルバム「短編集」「心守歌」からの曲が歌われ始めました。
「囁く雨」、「樹高千丈 落葉帰根」、「あのバスに」、「夜行」、「地上の星」、「ヘッドライト・テールライト」そして
華やかに「LOVERS ONLY」、二度のアンコールに答えて最後は「月迎え」でした。
舞台照明も素晴らしいものでした。「ヘッドライト・テールライト」のバックでは、
大海原に太陽が昇る瞬間を現していました。
歌っている中島みゆきとともに、忘れられないシーンとなりました。
中島みゆきは最後に水色のドレスを身にまとって消え入るようにステージから去っていったのです。
公演を終えるにあたってファンへの感謝のメッセージとともに、彼女の本来のトーク、口調に戻って、
こう話し始めたのです。
「20世紀から21世紀になった今、私達は今ここに生まれ会わせました。20世紀では、
人々は21世紀には、皆が 幸せな日々を送り、戦いのない世界が訪れることを夢見ていました。
21世紀になった今、恐ろしい夢を抱く人達が いて、21世紀の技術が、その光景を
私たちの前に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
人間は未だ幼いのではないでしょうか。大人に なるのには、もっと時間がかかるのでは
ないでしょうか。
でも・・・・・・いつかきっと、人間って素晴らしいと思える時がくることと思っております。」
彼女は深々と頭を下げました。
会場を出て時計をみると、午後九時十五分でした。席を立つ私の後ろから「心守歌」が聞こえていました。
寒風がよせる街の中を家路へと向かう中、今日は自分自身に素敵なプレゼントができたなと思えました。
一年間頑張って働いてきた自分への大きな贈り物となったのでした。
「中島みゆき」・・・・それは素晴らしきアーティストです。
次はどこで出会えるのでしょうか。会いたいな。どこかで。