五代目 春風亭 柳朝 師匠編 

 


 惜しくも若くして亡くなられた。実に残念である。

 収録本数もやはり少ない。江戸っ子芸の真の噺家だと思う。

 べらんめい調の口調は実に小気味良い。師匠の芸に惚れて寄席に

 通ったファンは多いはずである。私は残念ながら師匠の出ている

 寄席には行っていない。実演をみていない。実に口惜しい。

 現代の噺家でも柳朝師匠のような口調はできない。

 師匠は粋な方で寄席に行くにも洋装だったという。これが嫌みではない。

 少し円生師匠と似ているかもしれない。

 師匠の弟子のは小朝師匠という逸材をえて、その芸の継承はないにして

 も粋な芸はしっかりと継承できるのではないでしょうか。

 「二朝会」という志ん朝師匠との二人会をやっていて、互いの芸を

 磨いたということだ。若い頃、談志師匠が当時の全生(現円楽師匠)を

 ライバルとしていたのと同じ構図なのか。

  

五代目 春風亭柳朝

粗忽の釘

五代目 春風亭柳朝

鮑のし

五代目 春風亭柳朝

錦の袈裟

五代目 春風亭柳朝

蛙茶番

五代目 春風亭柳朝

小言幸兵衛

五代目 春風亭柳朝

駆け込み寺

五代目 春風亭柳朝

佃祭り(上)

五代目 春風亭柳朝

佃祭り(下)

五代目 春風亭柳朝

宿屋の仇討ち

 

「錦の袈裟」・・・・・・・・・という噺

 

 ちょっとHな噺である。例によって町内の若い衆、祭りで、隣町の若い衆に

 負けまいと色々と趣向を考える。去年の趣向は背中に彫り物をして全員揃うと

 「龍」の絵になるというものであった。がこれが、陳腐で一人になると絵に

 ならない。失敗であった。

 そこで今年は一計を案じて「錦のふんどし」で吉原参りとシャレこんだ。

 「錦のふんどし」なんて、そうそうあるものではないが、質屋の伊勢屋にある

 のを借りることなったが、一人分、熊さんのが足らない。

 困った熊さん、女房に相談するとお寺の和尚さんが錦の袈裟を持ってるから

 借りてきたらどうかということになり、和尚さんをうまくごまかし、明日の朝

 返すという約束て借りてくる。

 

 町内の若い衆、錦のふんどしをして吉原総見となる。案の定、吉原中の評判を

 とって上得意。特に熊さんはおおもてとなって下へも置かない扱いを受ける。

 あさまらないのは仲間の連中。「なんで熊公だけがもてるんだ。」と訳を

 花魁に聞くと、「あなた方は本当は身分の高い人たちでしょう。そうでなきゃ

 錦のふんどしなんてはけっこないもの。隠れ遊びなんでしょ。なかでもあの

 お方(熊さんのこと)はふんどしにわっかを下げているのをみると、お殿さま

 に違いないわ。だってお殿さまは用を足すときには自分で握らずにおそばの

 用人にもたせるって聞いたわよ。」

 お殿さまに間違えられた熊さん。通された部屋も高級で二間続きの上部屋。

 花魁から丁重なもてなしを受けた熊さん。朝になって仲間が迎えに来ると、

 花魁が離そうとしない。「旦那はん、今朝は帰しませんよ」

 「何、今朝は帰さない(袈裟は返さない)。しまったお寺をしくじる」・・・

 というオチ。

 

「蛙茶番」・・・・・・・・・という噺

 

 これもHな噺。噺には芝居を扱ったものが多い。特に素人芝居。江戸の町民

 には数少ない娯楽だったのだろう。「七段目」「四段目」(大阪では蔵丁稚)

 など素人が芝居にうつつをぬかす姿が語られている。

 この噺にでてくる主人公は「建具屋の半公」。この人物は町内の小間物屋の

 ミー坊に岡惚れという設定。例によって町内衆が寄り集まって芝居をやろうと

 いう算段。演題は大抵が「忠臣蔵」と相場が決まっている。役で人気があるのは

 「勘平」で、なりてが多くて出番を割る始末。芝居好きの伊勢屋の若旦那には

 「蛙」の役を役割したのもだから、若旦那は当然でてこない。しょうがないから

 「定吉」が代役となる。主人公の半公には「舞台番」という役になる。

 この「舞台番」という役はあまりパッとしない役で、舞台の横に座って客席の

 方を向き、見物人を見張るという仕事。半公はミー坊にいいとこを見せたいのに

 「舞台番」では格好がつかない。渋っている半公にミー坊が「濡対番」こそ

 裏方の役で本当は男らしい役だと言っていたとたきつけて、半公をその気に

 させる。格好をつけたい半公は「舞台番」が裾をはしょって座ることから、

 見物人に見える「ふんどし」に一工夫してやろうと考えた。「錦の袈裟」と

 同じような発想である。そこで緋ちりめんのふんどしを用意した。

 芝居に行く前に風呂屋で身きれいにした半公、緋ちりめんのふんどしをしないで

 芝居小屋に行ってしまう。いよいよ「舞台番」についた半公、尻はしょりして

 舞台横に座り込んだ。半公の逸物は町内でも評判のもの。それをさらけだしたの

 である。驚いたのは観客だ。男もいれば女もいる。なにげなく舞台横を見ると

 例のものが・・・・・場内がザワザワしてくる。

 そうとは知らない半公はますます前に迫り出してくる。

 舞台の方はてえと、いよいよ定吉の扮する蛙の出番となる。・・・が

 なかなか出てこない。どうしたんだろうと訳を尋ねると・・・定吉どんが

 「だって、あそこで青大将が睨んでいるんだもん。」・・・とうサゲ。

 蛇が睨んでちゃ、蛙が出てこれないということに。・・・(.^!^.)

 

「駆け込み寺」・・・・・・・・・という噺

 

 これは師匠もめったにやらなかった噺らしい。皆さんも知らない人が大勢いる

 はずである。この噺はサゲがあまり良いできではないので噺家も取り上げない

 のかもしれない。他の噺家のコーナーで紹介することはないと思えるので

 ここで取り上げることにした。「三行半」で離婚が成立した時代。

 「嫁して三年子無きは去れ」などと言われ女性は大変不遇な時代であった。

 どんなに嫌な亭主でも女房の方から「三行半」をたたきつけることはできない。

 子供でも生まれりゃもう、あきらめるしかない。・・・

 そんな時代にも救いの手をさしのべたのが、「駆け込み寺」であった。

 鎌倉にあるその寺に・・通称、縁切り寺と呼ばれた・・駆け込めば保護して

 もらえて嫌な亭主とも別れられるということだ。

 でも事実は相当なお金を用意しないとだめだったらしい。逃げ込めても辛い

 仕事があり辛抱できずに逃げ出して元の黙阿弥という女も結構いたらしい。

 

 噺のストーリは、こんなもの。あまり面白くないので短めに切り上げる。

  江戸の長屋のある夫婦、亭主が浮気をしたものと勘違いをした女房が夫婦喧嘩

 の末に家を飛び出す。鎌倉に行かれては大変と後を追いかける亭主。

 もとから亭主に惚れている女房は寺に駆け込む気はない。

 ようよう寺の前で追いついた亭主。女房の本音がわかって一安心。

 朝から何も食べずに鎌倉まで追いかけてきたので・・・

 「安心したところでちょいと小腹が空いたなあ。なにか食うものはねえか」

 と亭主が言うと、門前の見張り番が「それなら前の茶店でいっぱいかっこめ

 いい」というオチ・・・(+_+)

 「かっこむ」と「駆け込む」をかけたオチで、本当にあまりできは良くない。

 

 当時江戸市中は女性の人口が少なく「娘一人に婿八人」といわれたくらい。

 女性の方は売り手市場だったのだが・・

 

「佃祭り」・・・・・・・・・という噺

 

 人情噺の類といえる。佃島は今こそ島という感覚は無いが、当時は船で渡る程

 ちょいとした遠出の所。佃煮で知られる所だ。

 佃祭りは漁師や船頭などが主役でやる祭りで威勢がいいもので、江戸の庶民が

 こぞって見にいったものだ。

 そんな祭りに出かけた主人公の旦那。終い舟で帰ると言って家をでる。

 祭りを観て終い舟で帰ろうとした旦那。舟に乗ろうとした瞬間、袖を引かれる。

 みると若き女がいた。終い舟だから振り切って乗ろうとした旦那だが。とうとう

 乗り遅れてしまう。その女が言うには「どうぞ旦那はんに、お礼がしとうござい

 ます、ぜひ家まで来て欲しい」という。仕方なく旦那はその女についていった。

 その女の家について遠慮がちに上がり込んだ旦那だが、その家の亭主が

 駆け込んできて、浜は大変な騒ぎだと言う。終い舟が転覆して乗客大半が死んだ  

 と言う。それを聞いて震撼の思いの旦那。あの舟に乗っていたら今頃は・・

 という思いが・・・・

 帰ってきた亭主に女が、「この旦那さんは五年前、訳あって橋から飛び込もうと

 した時に助けてくれた人でいわば大恩人。いつも貴方に話している旦那さんです。

 あんたから、そんな大事な人ならなんで名前を聞かなかったんだと言われても

 解らなかった旦那さんに偶然会ったので引き留めて家に来てもらったら・・・」

 それを聞いた亭主。「そうか解った解った。おめえの話し通り。いつも神棚に

 旦那さんの恩に感謝して拝んでいた。その思いが通じて旦那さんを助けることに

 なったんだな。よくやった。ほんとうによくやったよ。」

 それを聞いた旦那。五年前のそのことを思い出していた。そういえば・・・

 

 「情けは人の為ならで・・・」ということか。

 

 「ああ助かった」という思いの旦那。それでも気になるのは家人のこと。

 その頃、家人宅では事故のことが伝わり大騒ぎ。旦那さんはてっきり亡くなった

 と思いこんで早速葬式の準備に取りかかる。

 一方、一刻も早く家に帰りたい旦那。女の亭主に無理を言って舟を出してもらい、

 家路につく。葬式の準備に追われるところに旦那が帰ってくる。

 驚いたのは家人達。死んだはずの旦那が帰ってきた。・・

 オチはない。・・人情噺だから。でも良い噺ですね。人助けは自分の為にやる

 わけじゃないけれど、めぐりめぐって自分に・・・・・でなことがあるんだね。

 

 柳朝師匠は実に良いですね。惜しいよ本当に。小朝師匠頑張って

 下さい。柳朝師匠の芸風をそのまま継がなくても勿論いいけど。

 柳朝師匠に師事したことは紛れもない事実だし。でも

 やっぱり期待したい。期待できてるよ、もう!

 

 

 


ご感想をお聞かせください。
タイトル
お名前(必須)
メールアドレス(必須)
ホームページURL(省略可)
ご感想
このホームページはどうですか?
すごく良い 良い 普通 改善の余地あり 評価できない