三代目 春風亭 柳好師匠

 


ご存知、「野ざらし」の柳好。柳好の「野ざらし」といわれた師匠。

高座に上がると客席から「野ざらし」「がまの油」「電車風景」といった声が

かかる。声がかちあうと、客に気を遣って別の噺をしたという。

とにかく、「野ざらし」の声は多かったのです。

ですから絶品。何度聴いてもあきない。

噺の間。声の調子。くすぐり。何をとっても絶品です。歌い上げるような

メロディアスな高座というのでしょうか。

「梅は咲いたか」の、出にのって高座に上がって布団に座るや否や声がかかる。

他の噺家さんも柳好スタイル以外のものをやっているのを聴いた事が無い。

 

三代目 春風亭柳好

野ざらし

三代目 春風亭柳好

がまの油

三代目 春風亭柳好

鰻の幇間

三代目 春風亭柳好

居残り佐平次

 

「野ざらし」…………という噺

 

筋書きはご存知でしょうから。少し別の面から「野ざらし」を語ってみます。

この噺のオリジナルは中国の小話の集大成「笑府」からきています。

上方落語では「骨つり」となっています。

ところが上方と江戸では微妙に演出が違うのです。

最初に骨をつって回向をするまでですが、江戸落語では隠居さんが釣りに

行って河原の骨を見つける。釣ってはいません。上方落語では全く違って

旦那が芸子や幇間を連れて釣りに出かける。魚の長さ一寸につき1円の賞金

付きですから皆大物を狙って大騒ぎ。そんな中、幇間が骨を釣るわけです。

これも何かの縁と回向するのは、どちらも同じですね。

回向の礼に幽霊が尋ねてくる件は同じなのですが、江戸落語では若い女、

上方落語では大店の一人娘です。この一人娘は両親に先立たれて店の身代を

親戚達が食い物にしてしまう。思い余って身を投げてしまったという、

あわれなエピソードが語られる。

二匹目のどじょうを狙って女を目当てに骨を釣りにいくのは同じですが。

これから尋ねてくるのが江戸落語では武将が鎧兜でやってくる。上方落語では

あの石川五右衛門があの歌舞伎の姿でやってくるという設定。

   

これほど違いがあるのです。江戸が先か上方が先かは知りませんが、すこし

手直しをされながら伝えられているのですね。

 

江戸は人口の割に女性が少なく、だから「吉原」が必要だっだので、

なかなか結婚できなかったようです。長屋には“やもめ”が多かったという

のは納得できますね。

すこし、「野ざらし」から、外れてしまいました。

実は上方落語には「野ざらし」に似ている噺があります。

「天神山」という噺です。この噺の中に「野ざらし」を連想させる部分が

あって、こんな式になるのです。

   

 「墓見」+「野ざらし」+「狐釣り」+「葛の葉伝説」=「天神山」

  

ということです。ご常連の方にはご理解いただけるかと思います。

でも少しだけ解説をしましょう。

「墓見」というのは、“花見”にひっかけていて、桜見物の替りに墓石見物

をするというおかしな男の話で、墓石を相手に一杯飲んでいるという。

それも徳利は新しいのですが、尿瓶ときてる。

大阪弁で「へんちき」な男の話です。

「狐釣り」というのは、狐を捕獲して「黒焼き屋」に売るという商売の男と

そんな狐が可哀相になりお金で買い戻して逃がしてやる気のいい男の話です。

「王子の狐」の逆のストーリーになりますね。

その狐が恩返しに女性に化けて親切な男の女房になり、子までなしたという

落語ならず歌舞伎にも取り上げられている「葛の葉伝説」を加えると見事

「天神山」ということになるのです。

「葛の葉伝説」というのは色々なジャンルにみることができます。

女性に化けた狐を女房にして、子までなしたが、狐であることが解ってしまい

女房は「信太の森」に隠れてしまうという筋立てです。

「鶴の恩返し」も、このような話ですね。

「かぐや姫」などもこの類でしょうか。

「恋しくば尋ね来てみよ、南なる天神山の森の中まで」という詠が挿入されて

いますが、これは「葛の葉子別れ」という名狂言の中で演じられる

「恋しくば尋ね来てみよ、和泉なる信太の森の恨み葛の葉」という

役者が5行に分けて障子に曲書きをする場面を下敷きにしているのです。

子供を残して森に帰らなければならない母狐の無念を表わしております。

 

「狐釣り」というと、こんな場面もありますね、大店の番頭さんが、隠れ

遊びのお座敷でやる「狐釣り」という踊りというか遊びですね。

扇子を額に御面のように括り付けて顔を見られないようにして、芸子さん達

と鬼ごっこみたいなことをするという、……・

そうです、「百年目」という噺です。

「つーろよ、つろうよ、信太の森の狐どんをつろうよ。やっつくやっつく

 やっつくな」という謡の部分にも「信太の森」というキーワードが

でてくるのです。

  

なぜか、「野ざらし」から始まって色々なところに飛び火をしてしまい

ましたが、柳好師匠の絶品。「野ざらし」をぜひ味わってみて下さい。

でも高座で聴けないのは何としても残念ですよね。

せめてVTRでもあればと思うのですが。

キネコでもいいのです。NHKさんにはあるのかな。

ディレクターの○○さん、なんとかならないでしょうか。

 


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