立川志の輔師匠編パート2

立川流の中の飛車角が志の輔師匠と志らく師匠。これは異論の無いところでしょう。
知名度から言えば志の輔師匠でしょうけど。なにせNHKにでているし、CMにもでている。焼きそばのね。
志らく師匠のほうは、さほど知名度はありません。もちろん、この頃はラジオ出演などもしておりますし、
ファンは急激に増えていると思います。昨年11月に神奈川県は海老名で開かれた独演会に行きました
半分以上が空席だったことには驚きました。これほど達者な噺家があまり知られていないことにね。
志の輔師匠は家元からも一目置かれております。サラリーマンを止めて落語界に入られた。
古典を中心にやられておりますが、もちろんのこと、他の噺家さんがやるものとは違います。
へんなくすぐりで誤魔化す落語家。いつ聞いても同じ話をする落語家が多い中にあって、まくらでの、
話題の取り上げ方、そしてそれの処理の仕方は客席をうならせるものがありますね。
時事の話題をt取り上げてみたり、世間話的なことから、突っ込んでみせたりして噺へと入っていきます。
もちろん、まくらの話題と噺の本筋はつながっているのですよ。
落語の中で今は判らなくなってしまった言葉や風習などの説明は不要です。
判らない客が悪いのですから.すくなくとも独演会に来ようというなら基礎知識くらいは仕入れておかないと
いけません。
志の輔師匠の間も素晴らしいし、アドリブもまた楽しみです。
家元譲りでしょうね。
噺の中に時々、家元の口調が見え隠れするのも面白いところですよ。
立川流の噺家さんの皆さん、普段の観察力が凄いですよ。なにげない世の中の出来事に対して、風刺に
効いた話題を入れております。
志の輔師匠のまくらの話題をいくつか紹介してみましょう。
■皇太子妃雅子様が結婚される直前のころのことです。結婚式の日取りも近いものと、報道陣は連日
雅子様の自宅の前に陣取っておりました。ある日のこと。愛犬のショコラを連れて散歩に出かけようとした
雅子様にレポーターが問い掛けました。
「結婚式の日取りはいつ頃になるのでしょうか?」とね。
もちろん、こんな質問に答えられるはずもありません。だまったまま行過ぎてしまいました。
しばらくして雅子様が戻ってこられました.レポーターが同じ質問を繰り返します。
雅子様はうつむき加減で押し黙ったまま家の中に入ってしまいました。この時レポーターはこう言ったの
です。
「雅子様は無言の帰宅をされました。」とね・・・・・・・・。
「無言の帰宅」というのは別の意味がありますよね。
視聴者から抗議が相継いだのは言うまでも無く、テレビ局の関係者は始末書だらけだったでしょうね、きっと。
■米国の同時多発テロ事件の報道でのこと。ペンタゴンに飛行機が突っ込んで火災が起きている。
死傷者も出ている模様。アナウンサーはこう伝えたのです。
「・・・・・・・・死傷者の数は40名たらずということです。・・・・・・・・・」
「40名たらず」というのは、わずか40名くらいしかいないという風にきこえますよね。
抗議がなされたそうです。
どちらも、言葉の難しさをいいたいのでしょう。
このまくらの跡に、「猿後家」という話に入っていったのです。「さる」という言葉で浮き沈みしていく人間達の
姿を描いた傑作ですよ。
「出世豆腐」のまくらでは、「親切」と「大きな御世話」は紙一重であることを言っておりました。
貧しい学者に粗末なながらも食事を届ける豆腐屋。あいがたく戴く学者。
これがね、貧しいといえども学者の私にこのような粗末な食事を持ってくるとは・・・・・・なんてことになると
噺の展開も違ってきますね。
ほのぼのとした人情の機微を描いた、この噺。後半涙する人も多いでしょうね。
学者が豆腐を食べる仕草には観客席から拍手がありました。
となりの席の人は、「本当に食べているみたいだね。」などと言っておりました・
志の輔師匠は全国40箇所くらいを拠点に活動しているとのこと。
渋谷のPARCO劇場では何回も独演会をやっておりますので、ぜひ出かけてみてください。
落語とは結構置くが深いものであることを認識されるでしょう。
タレントがクイズをやったり、ただ遊びまわっているだけのTVなど観るのはやめて、落語を聞きにいきましょう。
寄席は数少なくなってしまい、地方の人は末広や鈴本、浅草などには、そうはいけませんでしょ。
でも地方には落語会の組織があって、ボランティアで活動している方々がたくさんおられます。
寿司屋の二階とか、お寺などをかりて、落語家を呼んで、100名くらいの客の中で落語を聴くことができます。
これって、寄席ですよ。常打ちでないだけです。仕事を終えて集まってくる。常連さんも多い。顔なじみので
世間話をしているうちに、落語家さんが出てきて一席。
とても素敵な時間ですよ。贅沢な時間でもある。知的な時間でもあります。
志の輔師匠は、そんな空間を与えてくれる。これはTVではできません。
高座をTVで放映すれば同じではないかと思われる方もいらっしゃいましよ。
でも、TV落語では、この空間を伝えることができないのです。
そして高座には志の輔師匠が待っておりますよ。
さてどんなまくらからはいってくるのでしょうか。噺家と客の勝負が始まります。