「三笑亭 夢丸 師匠」編


 

TVの釣り番組などでレポーターとして出演されているのでご存知の方も多いとおもいます。

かなり長い間やっておられるので、釣りの腕前も相当なもののようです。

大師匠の中で釣り好きというと「三代目 三遊亭金馬師匠」でしょうか。なにしろ釣り好きが原因で汽車との

事故に遭遇しましてね。足を悪くされたという。何か鉄橋を歩いていた時のことですって。

歌丸師匠も確か釣り好きでしたね。他にも沢山の落語家さんが釣りを愛していることでしょう。

夢丸師匠は多忙なTVのスケジュールをぬって噺の稽古をされておられるのでしょうね。

この頃の高座は実力が十分発揮されておりますね。夢楽一門には夢之助、夢三四、夢太郎さんなどがいて

皆さんなかなかの実力をおもちです。特に夢楽師匠のファンは女性が多いと聞いております。

さて・・・・・・・・・

夢丸師匠は下にもあるように古典落語をきちっと聞かせてくれます。

実に口調のいい芸風で風貌は故五代目 三遊亭円楽師匠に似ていると思いますよ。

達者な噺家さんですが、今はこの達者なという形容ができる噺家さんが少なくなっています。

タレント的なものを目指しているのではないかと思える噺家ではなく、落語屋が若手には目立ちます。

落語芸術協会には桂 歌丸会長という良い手本があるのですからおおいに勉強をしてもらいます。

夢丸師匠も手本ですよ。惜しむらくはもう少しメディアで放送して欲しいという点です。

寄席やホールに行けない人達が大半です。地方に住む人には最悪でしょう。落語は受け手を限定していた

時代を早急に脱却するべきなのです。夢丸師匠・・・・もっと地方での高座を増やすことはできないものなの

でしょうか。ご自身一人ではどうなるということではないのでしょうが。(泣)

 

「茗荷宿」というのは珍しい噺ですので紹介します。

他にも珍しい噺があるでしょう。「かがみ」は新作です。

 

三笑亭夢丸

茗荷宿

三笑亭夢丸

かえるの子

三笑亭夢丸

出世夜鵟

三笑亭夢丸

椿の喧嘩

三笑亭夢丸

一人酒盛り

三笑亭夢丸

錦の袈裟

三笑亭夢丸

親子酒

三笑亭夢丸

反魂香

三笑亭夢丸

かがみ

三笑亭夢丸

辰巳の辻占

 

「親子酒」…………………………………………・という噺

 

親子で酒好きという。酒好きというより酒におぼれる親子。飲み始めるととことんまでいってしまう。

毎晩毎晩、夜遅くまで飲んで帰ってくる。それももうベロベロの状態。酒というのは酔いたいから飲むのでは

ない。飲みたいから飲むのであって、結果的に酔うということになる。では酔わなくっても酒を飲むかというと

そうでもない。酒を飲んで酔わないのなら水を飲めばいいので、高い金出して酒を飲まなくってもいい。

結局は、おいしいから飲むということなのでしょうね。

毎晩毎晩、酔っ払って帰ってくる親子にあきれた女房が親父に怒りをぶつけたので、親父のほうは一応

わかったような気になり、息子にさとす。

「いいか。これからは、私もお前も外で酒を飲んできてはいけない。ということにする。もしこれを破ったら

 お前はもう勘当だ。」

「わかったよ。そうするよ。」

てなことで簡単に済んだようだが、物事はそうはいかない。

数日は酒を飲まないでいられたが、そろそろ我慢の限界というやつで、親父さん。帰宅するとね,ばあさんに

「おい。お銚子に一本でいいから、ちょいと願いたいものだね。」

「だめですよ。息子と約束したでしょうに。」

「約束したって、あれは外で飲んじゃいけないってことだよ。ここは家なんだから一本くらいいいじゃないか。」

「だめですよ。」

「わからない、ばあさんだな。一本飲めばきがすむんだから。な、一本だけ。」

「しょうがないんだから。息子が帰ってくるまえに切り上げてくださいよ。」

てなことでね、一本持ってきた。

「ありがてえなこりゃ。うーーーん。いい匂いだねこりゃまた。えらいご無沙汰をしておりましたねーー。

 早速、戴かしてもらいますよ。」

てんで、ぐーーーーと、やった。

「あーーーーー。生きかえるようだねこりゃまた。極楽てなこのことだよ。」

親父のほうは一気に飲んでしまう。

「おい。ばあさんや。もう一本だけつけてくれないかねぇ。」

「だめですよ。切が無いんだから。」

「も一本だけ。それで止めるから。頼むーーーーーー。」

しょうがないから一本つけた。

それも瞬く間に飲んでしまってね,もう一本、もう一本てなわけで、親父さんのほうはもうベロベロ。

そこっへ、案の定、ベロベロに酔っ払った息子が帰ってきた。

「これ、息子ここにこい!」

「なんだい親父。」

「毎晩。毎晩。ベロベロになるまで酒を飲んできて。もう止めろって言っただろ。」

「そういう親父も酔っているじゃないか。」

「「わしは外じゃ飲んでいねえぞ。それより、おめえは、いうから二人になったんだ。」

「そういう親父こそ四人に見えるぞ。」

「化物みてえな息子には身代を譲るわけにはいかねえぞ。」

「いらねいやい。こんなにぐるぐる回る家…………………」

 

お酒を飲むのもいいですけど、ほどほどにしましょう。

 

 

「茗荷宿」…………………………………………・という噺

 

茗荷宿の宿屋の老主人夫婦には一人娘しかなく、婿取りするしかないと、婿を入れた。この婿さんは、

働き者で人扱いも良く、宿屋は当然のこと身代は大きくなり、雇用人も増えていた。

しかし、老主人夫婦が亡くなって、若夫婦の身代になると、婿さんは本性を現したのか,飲む・打つ・買うの

道楽三昧。宿屋の経営など見向きもしなくなる。繁盛していた宿屋も次第に経営が悪化して借金に追われる

始末。おちぶれて、夫婦は残った金を元に、別の場所に「茗荷屋」という安宿をつくった。

客など、当然入るわけではないので、貧乏暮らしの日々。宿も寂れて風呂なども無い。ようするに宿屋の

体をしていないのだ。

そんな茗荷屋に何を思ったか客が入った。部屋に通されてから、客はどういう加減なのか、おかみに手荷物を

預けたのである。おかみが中身を調べたのはいうまでもない。驚くことに中には絹の反物一つに金三百両

が入っていた。おかみさんに悪心がおきた。亭主に相談すると、盗むなんてとんでもない、直ぐに役人に

捕まってしまうと弱腰である。こうなると、女はかえって肝がすわってくるもの。一計を案じた。

茗荷屋にこじつけて、明日は先代の命日なのですといい、命日には屋号に因んで、茗荷づくしの料理を

作って食べるというのだ。茗荷は食べ過ぎると物忘れがひどくなるということがいわれていた。

茗荷を沢山食べさせて、預かった手荷物のことを忘れさせる。客が忘れていったものをもらうのは、罪には

ならないというわけだ。(実際には罪なんですけどね)

そこで、茗荷の炊き込み御飯、茗荷の卵とじ、茗荷入り味噌汁、茗荷の漬け物、冥加のテンプラと茗荷づくしの

朝食をだしたのである。客は、それなりにおいしい茗荷料理を全てたいらげた。宿をはやくでて目的地に

行かなければならない客は、あわててわらじもはかずに、飛び出していく。

夫婦の目論見は見事的中したようにみえたが。先ほどの客がしばらくして、慌てて戻ってきた。

街道を歩いていると、足の裏が痛くてしかたがない。足を見るとわらじをはいていない。

宿でわらじをはなずにでてきたことに気づいた。そこで戻ってきたのだという。

客はわらじをはいて、また出ていった。夫婦は安堵したが。またしても客が戻ってきた。

街道を歩いていると皆、荷物をもっている。自分は旅をしているのに荷物は持っていない。宿屋に忘れて

きたこおに気づいたというのだ。それも、荷物は絹の反物だという。三百両が残ればいいと、夫婦は反物を

渡した。しばらくすると、またしても客がもどってきてね、自分が一文無しだということに気づいたという。

確か、三百両を預けてあったという客に、しぶしぶ金を渡した。夫婦の目論見は灰燼にきした。

客は安心して出ていった。

「何打。茗荷を食べると物忘れをするというけれど、あまり長くは効かないんだ。」

「あれっ。忘れたままのものがある。」

「なんだい。」

「旅篭賃を払うのを忘れていった。」

 

てな具合の噺でした。